「一億総クリエイター」という考え方は正しい

ただし、創作物の「品質」を気にしないという前提条件において。

ニュースサイトに載るコラムは心の清涼剤であると同時に、さまざまな示唆を運んでくれる。
その中で、今回気になったのが、ITmediaの、
小寺信良の現象試考:「一億総クリエイター」という勘違いに至る道のり
という記事。

ここでは、ニコニコ動画を例に挙げて、「プロとしてのクリエイター」の立場から「商業コンテンツをどう作るか」の課題を指摘している。
小寺氏は、クリエイター育成の場としてニコニコ動画を方向付け、その方向性を潮流づけることがビジネスの鍵としている様子だが、実のところ私にはそんなところに興味はない。

私がここで興味があるのは、ニコニコ動画が時空を超えて、初期のコンテンツである「相互的な娯楽」を再現したことである。
ニコニコ動画は時間や空間に縛られず、それでいて同期的な場を作るという画期的な仮想空間を作り出している。
したがって、投稿した作品が高く評価されることで「自分(の満足感)と、自分(の作品)を好きな誰かのために」自らの腕を磨くという、もっともプリミティブな成長の要求を生み出す。

このような場が、過去にあったかと言えば……時空を超える必要がなければ、実は数十年前から存在している。
コミックマーケットである。
「同人」という趣味と表現と交流の場を守っているこの大規模イベントでは、(基本的に)実力や知名度などに依らず、(ほぼ)平等に作品を作りだす機会を与えられる。
そうやってコミュニティが育ってきているところを考えると、CGMのビジネス化というのは、コミケを商業化する思想に近いと思われる。

個人的には、小寺氏の考え方にも一理あるとは思うが、それよりも
・CGMコンテンツやその作者を商業ベースに載せることに意味を感じない
・ビジネスを考えるのであれば、むしろニコニコ動画というプラットフォームそのものに着目すべき
2点を考えたい。

前者は言うまでもなく、コミケのような「自由に表現できる場」を提供することが社会的価値である、という見方である。
趣味の世界からカネになるコンテンツを生むとか、人を育てるとか、そういうビジネスのにおいを感じさせるのは、趣味の場という考え方を薄めてしまうため、個人的にはあまり得策だとは思えない。

では、どうビジネスをすればいいのか、といったところで、後者の考え方が出てくる。
ニコニコ動画は、現在ではバナー広告、Amazonアフィリエイトなどをメインとして収益を上げている(赤字は脱したのだろうか?)。しかし、ニコニコ動画という「サイトを維持・発展させる」ためのノウハウも、また収益の源泉となりうる点を指摘したい。

具体的には、
・コンテンツの立場から:動画の作り方、絵の描き方、音楽の作り方、プロジェクトマネジメントなど、「作りたい」欲求を満たすための初歩的な教育ビジネス
・インフラの立場から:負荷制御、セキュリティ対策、web系の高信頼ソフトウェア開発手法、アイディアの実現化手段など、専門的なノウハウを企業向けに提供する高度な教育ビジネス
などの「知識・知恵の横展開」をビジネスとする方法である。

専門知識を横展開すると、ライバルが増えることを危惧するかもしれないが、実のところ(ニコニコ動画のような個性の強いビジネスには)そういうことは考える必要もない。ニフニフ動画というサービスを耳にしたことがあればこれは明白であろう。

では、専門知識を売れるのかと言うと、買う企業はかなり多いに違いない。コンテンツ開発側は使いやすく信頼性の高いECサイトを常に求め、インフラ開発側は「クラウド・コンピューティングの中の人」として、さらに高度な専門知識を得るための足がかりを必要としている……はずである。

……とまあ、何も調べずに戯れ言を垂れ流してみたところでまとめ。あくまで個人の感性と偏見による。
・CGMはあくまで消費者のためのもの。ビジネスとか考えない方が良いと思うよ。
・プラットフォームなんかのノウハウを売ろう。こっちはビジネスとしてかなりいけるんじゃないかな。

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