そんなあほな……

知り合いのblogで見つけた記事を見て、一瞬恐ろしくなった。

毎日新聞よりコピペ。

<音楽保存サービス>ストレージ利用は著作権侵害 東京地裁
5月25日20時39分配信 毎日新聞

 インターネット上にデータを保存する「ストレージ」を利用し、ユーザーが自分のCDなどの音楽データを保存、いつでも携帯電話にダウンロードして聴けるサービスの提供が著作権侵害に当たるかどうかが争われた訴訟の判決で、東京地裁(高部真規子裁判長)は25日、著作権侵害に当たるとの判断を示した。
 問題のサービスは、情報通信会社「イメージシティ」(東京都台東区)が05年11月から始めた「MYUTA」。ユーザーは音楽データをパソコンから同社のサーバーに保存し、携帯電話へのダウンロードはユーザー本人しかできない。
 このサービスに対し、日本音楽著作権協会(JASRAC)は著作権侵害だと指摘。同社はサービスを中止したうえで、同協会を相手に著作権侵害に当たらないことの確認を求めて提訴していた。
 訴訟で同社は「実質的にデータ複製や送信をするのはユーザー自身。不特定多数への送信はしておらず、著作権は侵害しない」と主張したが、判決は「システムの中枢になるサーバーは同社が所有、管理しており、同社にとってユーザーは不特定の者。複製と公衆(不特定多数)への送信の行為主体は同社だ」と判断。協会の許諾を受けない限り、著作権を侵害すると認定した。【北村和巳】

高部真規子は一太郎ショックでもやってくれちゃったダメ裁判官なんで今更言うこともないんだが、それにしてもこの判決はお粗末に過ぎる。(参考までに、この裁判は高裁にてジャストシステムの逆転勝訴。)

この判決が出た根拠は、個人サイト「ナガブロ」さまが詳しく、わかりやすい。

んで、読んだ感想。
高部、裁判官やめて首吊ってこい。

高部の立場で詳細な解説を頂いたナガブロさまには申し訳ないが、ナガブロさまの記事を見ながら、高部の論理を一手ずつ崩していく。お手元に、著作権法のページをどうぞ。

キーポイントの1(複製権):サーバー上でのデータ複製は私的利用か否か

著作権法30条「私的使用のための複製」に関する例外・第1項
一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合

……はい、「複製の機能」。ここテストに出ますよ(嘘)。
一般的に、ストレージサービスが単体で複製の機能を有することはありません。複製を行うのは、クライアントであるパソコンなりケータイが主であり、ストレージサービスはあくまで従に過ぎません。
例外として、バックアップあるいはレプリケーションのために、サーバーが複製の機能を有する場合がありますが、機器故障などの損害からアップロードされたデータを保証するためだけに行われることであり、外部アクセスからは厳重に保護されます。このため、著作権法上の『複製』にあたらないと判断するべきです。

キーポイントの2(公衆送信権):公衆送信って何よ?
著作権法第23条に違反している可能性についての議論なのだが、著作権法は公衆について以下のように定義している。

著作権法第2条第5項
この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。

……はい、「多数」。ここテス(ry
ストレージサービスですから、当然IDとパスワードによって、本人しか利用できない状況になるわけです。すなわち、多数の者は含まないわけですね、これ当然。

キーポイントの3(カラオケ法理):バイナリデータとは、業者が管理出来るものか否か

んで、この判決が出る根拠となった「カラオケ法理」。
Wikipediaにもあるとおり、(1)支配・管理性(2)利益の取得性の2点が挙げられるわけですが、この手のサービスの本質について、申し上げましょう。「支配すんの無理」。
ストレージサービスとはデータの保存スペースを提供するサービスであるため、データの中身をチェックした時点で、顧客についてのプライベートな情報を入手することになります。ローカルに入れておくと消えてしまう怖さのある住所録や、ケータイで恋人同士が見られるように「あん♪」な写真等をアップロードする用途だって考えて良いわけです。こんなデータが入っていることだけで、企業にとっては国家機密レベルの極秘情報。そんなデータを、『他者からアクセスできない』『確実に保全する』以外の管理を行おうとしたら、その時点でプライバシーを全力で侵すことになります。
カラオケ法理で言うレベルの支配性(テープなりデータ配信なりで楽曲を提供する)を、この判例が持ち得ないのは、技術者にとっては火を見るよりも明らかです。

さて、法律の素人が述べている程度のことですから、間違いは多々あるでしょう。ただ、技術者として、この判決に納得の行くコンピュータユーザが居て欲しくない、というのは、単なる個人のわがままなのでしょうか?

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コメント / トラックバック3件

  1. より:

    ワガママじゃないと思うy
    ナガブロさんのブログに書いてあることかもしれないけど、
    自分なりの見解を

    キーポイントの1(複製権):サーバー上でのデータ複製は私的利用か否か

    著作権法第30条1項1号の例外規定
    これは思うに「複製した物が自分の管理外に保存される」
    という点を言っているのかなと
    (実質的管理者は個人ではなく会社ということなので
    言うなれば複製した物を頒布しているとも、とれなくはない
    (頒布という表現が適切かは無視しt
    これをとって、私的使用の範囲外であると
    裁判官はそう思っているんじゃないかな?

    ただ、これだとナガブロさんの言うように
    訴えられるのはユーザーであり、その手間は半端ではない
    ということなんです、はい

    キーポイントの2(公衆送信権):公衆送信って何よ?

    自分もこれは気になってるんだけどね
    それをとって「多数」とるすのか
    と考えると、広義の多数を取るくらいしか理由が…
    「会社のサービスを受けている公衆」ってね
    …無理があるのは自分で言っていてわかるg
    現実的使用者に、ではなく実質的管理にとの違いだろうか…

    キーポイントの3(カラオケ法理):バイナリデータとは、業者が管理出来るものか否か

    カラオケ法理は完全には理解してないので、
    間違ったことを書くかもorz
    ご容赦ねがいまs

    たくみさんの言う「保全」に関して
    結局のところ、サービスとはいえ関与しているわけだと思われ
    完全とはいえなくとも支配していないわけではないはず
    (支配していないのなら、バックアップは出来ないし、
    (消えても自己責任でくらいでないとね、極論だが
    わかりやすいように言うのなら、
    コインロッカーを貸しているもの
    その(ロッカー本来の)所有権は会社
    貸しているだけとはいえ元は会社ものもであるから、
    完全な個人空間であるとは言いにくい
    プライバシーも実際のところはあるのかな、という懐疑的見方も
    (見たところで「保全だ」と言ってしまえばそれで終わり
    漏洩しない限りはプライバシーは主張できないかと

    以上により、
    形式的には個人なのだが、実質的管理は会社なわけで
    管理をしているということは部分的であれども支配しているということ

    …そんな細いロープでこの論理は成り立っているわけでs

    自分もあまりこの判旨には賛同できないかな
    だって、
    著作権法を出すのなら著作者の親告罪であるはずだし
    何で著作者本人の申告が全く無いんだろうね?
    利権団体はあくまで利権団体なのに、大見得張るな
    という結論で(おぃ

  2. 菅野たくみ より:

    >☆さん

    判決を支持するならば(←ここ重要)JASRACは著作権代行業としてきっちり仕事をしていることになるんで、単なる利権団体というのはちょっと穿ちすぎかなと思う。

    で、問題は「支配・管理」の定義なわけです。
    技術的には、ストレージサービスはしょせん、バイナリデータを管理しているだけです。システムの管理者といえど、ユーザーの許可を得ずにデータを見るのはプライバシーの侵害であり、違法なハッキング行為であることは明白でしょう。
    参考まで、バックアップ・リストア・レプリケーション・チェックポイント復元などなど、サーバーとシステム保全に必要な作業の大半は、バイナリデータの中身が何であるかを知る必要は全くありません(←重要)。
    公共ロッカーとの差は、「中身を知らなくても管理出来る」。この1点が大切です。

    このとき、JASRACが何か言えるのは、「楽曲を管理している」場合に限られるわけでして、すなわちデータの種類が何であるかを最低限知らなければならない。
    このとき、「楽曲としての」情報を管理しているのはユーザただひとり、と言えます。

    この状況下、「ランダムなビット列を管理している」ことが「楽曲を管理している」にあたるのかどうか、慎重な議論が必要と考えます。
    ストレージに何曲入っているかも分からないのに、自作曲や「魔理沙は大変な物を盗んでいきました」等のJASRAC未登録曲をどうやって見分けろと言うのか、是非教えて欲しい物です。

    そういうわけで、エントリーには「支配・管理性はない」旨を書いたわけです。
    サーバー管理に関する専門的知識を当然のごとく書いてしまったのは申し訳ない。

  3. より:

    >で、問題は「支配・管理」の定義なわけです。
    技術的には、ストレージサービスはしょせん、バイナリデータを管理しているだけです。

    バイナリデータを「管理」しているという事実が必要で、
    ユーザー個々の許諾は必要ではないのでs
    バックアップの為の保存はサービスだとは思うけど、
    それをやっているということは一定の管理しているということだし
    (当然、各々の中身を見るという必要性は全くない
    よって
    >公共ロッカーとの差は、「中身を知らなくても管理出来る」
    この一文に尽きまs
    管理には一定の支配(≒規則支配)が必要で、逆も然り
    だと思ったので

    この考えを発展させると
    現状の企業が運営しているHPサーバでも、
    同系統に語られることになるだろうし
    それが怖いんだよね、この判決は
    (判決は前例が出来てしまうとそれに準ずることが多い
    たくみさんの思い描く想像で大体はあっているかと

    ランダム配列については専門職でないからなんとも(汗
    形式(mp3やwma、ogg等)で数値も変わるだろうし
    別のデータが引っかかる事だってあるだろうしね…

    JASRACが嫌いなのは2chの影響もあるけど、
    法律勉強時にいろいろと判例も勉強するわけですよ
    著作権法の音楽項目の大半が上記企業なわけで
    代表的なもので大槻ケンヂさんの事件は未だに納得がいかないのですy
    そこから自分は「法を盾に取った利権集団」という認識でs
    (個人思想なので気にしないことをおすすめ(おぃ

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