葬儀

2008年5月14日、17時30分。
祖父が亡くなった。75歳だった。

このblogの大半の読者は私の祖父とは無関係ゆえ、本エントリーは非常につまらない記事となる。ただ、このページはページタイトル通り、私にとっての“チラシの裏”であることから、必要があれば、読み飛ばす・ブラウザを閉じるなどの対処を各位お願いしたい。

【5/14 22時】
会社から帰ったら、ケータイがちかちかしている(私は会社にケータイを持って行かない主義)。どうやらメールが着信している様子。
何だろうと思って、未読メールを確認してみると、母からのメールが2通連続で届いていた。
1通目は祖父の危篤を知らせるメール。2通目は、祖父の逝去を知らせるメールだった。

祖父は4月初旬に突然倒れ、余命3ヶ月の宣告を受けていた。4月中は親戚による見舞いであわただしかったようで、GWを避け、5月末くらいに見舞いに行こうと決めていた矢先の知らせだった。
昨年、会社の同期が亡くなったときに比べれば、覚悟はできていた分だけ驚きは少なかったが、「余命3ヶ月」の曖昧さを考慮できていなかった自分の甘さに後悔したことも確か。

【5/14 23時】
こういう事態は初めてだったもので、何をしていいものだかさっぱりわからなかったため、親からの次の連絡を待つ。
5/15は友引のために葬儀を執り行うことができず、16日に執り行うこととなった。

【5/16 8:20 集合】
5/15の出社にて有給休暇を申請し(忌引休暇もあったが、有給休暇を使った方が給料が減らない)、その翌朝。判断ミスから乗り継ぎの電車を逃し、集合時間に数分遅刻した。
それは計画通りだった様子で、準備に移ったところ、親に5人前程度のコンビニ飯(おにぎりとかサンドイッチとか)を渡され、
「朝飯食べたか?」
「もらうけど、みんなは?」
「食べた」
……食べた後にこれだけ残る……親の判断ミスもひどい。
親の言葉に甘えてサンドイッチを一袋だけ、飲み物とともに胃に詰め込む。

【5/16 9:00 出棺】
祖父の遺体を目の当たりにして、正月時点との差異に驚く。
葬儀屋の指示で、祖父の遺体に白い布や数珠などをつけていく。孫である私も、祖父の足に白い布を一枚つけたが、身体の冷たさと、足のふくれ方に尋常ならざるものを感じた。後ほど祖母に話を聞いたところ、闘病のときに体型が変化し、死亡後に冷凍庫(?)で保管されていたとのこと。理由は納得しても、死を間近で感じる異常さに変わりはない。

祖父の身体を棺に収め、花を添えたところで出棺。母と叔母が車を運転するとのことで、写真を私が持つこととなった。

【5/16 10:00 霊柩車】
乗り心地とエンジン音はタクシーのそれ。真横にある棺に使われる木の香りが良かったのが、なんとなく気に障る。棺の中に祖父が収まっていることを、自分の手で棺に収めたにもかかわらず、棺のそばにいるにもかかわらず、実感できなかった自分に、無駄に腹が立った。

【5/16 10:30 火葬】
火葬場にて、棺を所定の場所に置き、最後の別れ。ふたを開けると、祖父がそこにいたことに安心する半面、やつれた顔がやけに強調されていた。
その後、棺を釜に入れたところを確認し、線香を上げる。

【5/16 11:30 骨拾い】
骨拾いのために場所を移すと、先客がいる。どうやら、先客が場所を間違えたらしい。
ひやひやしながら部屋に入ると、骨は到着していない。他人に骨をさわられていた、ということはなかったらしく、胸をなで下ろす。
係員の指示に従い、骨をふたりで一本ずつ拾い、骨壺に収める。その後、係員が骨全部を骨壺に収め、骨拾いは終了。
骨と位牌と写真を持ち、帰宅する。

【5/16 12:00 帰宅】
祖父の居場所を確保し、本日のメインはここまで。
近くのそば屋で昼食の出前をとり、まったりモード時……に、生前祖父のいた部屋を覗かせてもらった。

……私を出迎えてくれたのは、未開封のiX5000。数年前にA3プリンタを一緒に見たとき、私が勧めたのがCanonだった。そのときも、「使う段になってから最新機種を買えばよい」とのアドバイスをした記憶がある。
部屋を見渡すと、古ぼけたワープロが一台、大切に置かれている。これも、十年近く前になるが、祖父と二人でアキバ探索して決めたワープロだった。祖父は非常によくこのワープロを使いこなし、ときどき変わった使い方を自慢していたこともあった。昨年もまだ動いていた様子で、祖父の生き甲斐を作るための大きな一助になっていたことは容易に想像できる。

iX5000の「Windows Vista Certified」ロゴと、それを接続しようとしていたPCのWindows95ロゴがひどく不釣り合いであった。それが死の直前まで、疎遠な孫である私のことを考えてくれていたことは、言葉を聞くまでもなく、部屋の様子が克明に物語っていた。

おじいちゃんへ。僕は、元気です。今まで、ありがとうございました。
天国に行っても、いつもどおりに人生を楽しんでください。

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コメント / トラックバック7件

  1. mk8426 より:

    この度はご愁傷様でした。
    ご存じかと思いますが、私も先月祖母を亡くしましたので、その時のことを思い返しながら読みました。
    私の祖母は数年前からずっと入院していたのですが、それでもこの時期の死はある意味「予定外」の出来事であり、1ヶ月たってようやく踏ん切りが付いた気がします。

    ところで…忌引で給料引かれるんですか…。私が以前いたところでは忌引では減額されなかったですけど。まあ、それぞれの会社によってその辺の考え方が違うんでしょうねえ。

  2. より:

    この度はご愁傷様です
    MSNの文から混乱していることは伝わってきていたからね

    自分も高校3年の1月に曾祖母を亡くして、
    直系の長男と言うことで、たくみさんのように写真を持ってこなしていました
    当時は実感が湧かないもので、隣に座った父親の号泣が今でも焼きついていたり…
    3月に大学入試試験を控えていたこともあり、その余裕がなかっただけかもしれないけど…

    その曾祖母が使っていた部屋が、今の自分の部屋
    ふと見上げると先祖の写真と共に曾祖母の写真もある
    (友達は気味悪がっていたけどね

    …同人もあるんだけど、曾祖母の性格上気にしないと思っている

  3. PoLo より:

    このたびはご愁傷様です。

    私も昨年、祖母を亡くしました。
    それも、結婚して1ヶ月もしない内に……です。

    長い闘病生活ではなく、あっという間の出来事でした。
    体調を崩し入院し、一度は危篤状態になるも持ち直し、家族が一安心したら、再び体調を崩し、亡くなってしまいました。

    結婚の報告も、嫁さんの紹介も間々ならず
    「落ち着いたら」とか「今度のお盆にでも」と、先延ばしした事を……それを今でも後悔しています。

    人間、やらずに後悔するくらいなら、やって後悔した方が良いですね。

  4. Q-turn より:

    このたびはご愁傷様でした。

    今回の一件を最初に知ったのはたくみさんのMSNのタイトルが変わってからなのですが、実はそれがきっかけで昨日から今日にかけて東京郊外の母方の祖父母の家に行っていました。

    二ヶ月前に手術をしたせいか、今年80になる祖父は若干顔色が優れませんでしたが、それでも術後の経過は問題なく、祖母と共に健康に過ごしているようでほっとしました。
    同時に、これからはなるべく頻繁に顔を出すように心がけようと、そう思った次第です。

    大学入学式の日の朝に別れてから6年と少し。

    その間ただの一度も顔を見せることなく、最後に別れた時に入った大学も今年の春に中退。
    先月仕事を辞めてから、なんとか時間を作って会いに行こうとは思うものの、面目の無さからなかなか思いきりがつかずに足遠くなってしまっていた所だったのですが、先日就職が決まったことと今回の件で、ようやく会いに行くことができました。

    場にそぐわない言葉であるので、本当に言いたい言葉は控えますが、最大限の謝辞と追悼の意をここに記させていただきます。

    縁なく、ただの一度も顔を合わせられなかった故人に、どうか安らかな幸福が訪れますように。

  5. 菅野たくみ より:

    コメントいただいたみなさま、また、個別にお声がけいただいたみなさま、祖父の冥福をお祈りいただき、本当にありがとうございます。

    みなさまのコメントを読ませていただきました。
    個別レスするには少し重い内容と思いますので差し控えさせていただきますが、ご家族との想いの強さを感じることができ、私個人としても、祖父の葬儀に参加できたことの幸せを再確認することができました。

    忙しさにごまかされているだけかもしれませんが、数日経過して、やっと少し落ち着くことができました。
    四十九日という言葉がありますが、もう少し経ってからもう一度、家族みんなで祖父との思い出を振り返ってみようと思います。

    ……と、その前に、目の前のコミケという壁を乗り越えることにいたしましょう(笑)

  6. […]  この日の午後、私は関東地方某所で、祖父の納骨式に参加していた。(参考:5月日記「葬儀」)  納骨式が終わったところで軽くお茶をのみ、終わったところで実家に帰還。  当 […]

  7. […] 父の逝去】 2010年3月26日、逝去。同4月2日、告別式だった。 親類を亡くすのは一昨年に続いてのこと。 詳細は書かない。細かい様子を書く理由もないし、書き記すだけの知識 […]

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