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elder-alliance.org  >  奇跡のかけら  >  KanonTCGSS  >  その22

この話は、Key・VisualArts「Kanon」およびティーアイ東京「Air&KanonTCG」から取材しました。 関係する会社名・商品名に限り実在しますが、その他全てフィクションです。 以上をふまえた上で、この話をお楽しみ下さい。

第22話~身代わり~

7月も後半にさしかかり、世の学生たちも、試験期間が終わり、夏休みを楽しみに待っている。

さらに、大学生ともなれば、気分は夏休み一色である。

「……よし、このカードをデッキに加えて……」

その夏休みを、カードゲームに費やす祐一。

「祐一さん、頭良いですね!だったら、私も……」

それにつきあう、栞。

「あんたたち、暇ねぇ……」

たまたまそこ居合わせた、香里がつっこみを入れる。

「……そう言えば、香里先輩は、暇ではないのですか?」

なぜか香里についてきている、美汐が言う。

「あ、天野さん!久しぶりです……」

「美坂さん……卒業は、できそうですか?」

「それは大丈夫です。問題は、大学なんだけど……祐一さんとお姉ちゃん、どっちの学校を受けようかなって……」

「どちらも、かなり難しいですよ」

「そんなこと言う人、嫌いです」

美汐と栞の会話は、かなり久々のはずだが、思ったより長く続く。

「それより、受験のテスト問題なんですけど……」

「ええ、それなら……」

共通の話題を見つけてしまった女の子2人の会話は、誰にも止められない。 あきれ顔で香里を見る祐一に、香里は首を振って答えた。

「……そろそろ、名雪が帰ってくる頃かしら」

夜、水瀬家の主、水瀬秋子がつぶやく。

「そうですね……迎えに行ってきましょうか?」

水瀬家で食事をごちそうになっていた香里が、相づちを打つ。

「大丈夫よ、気を使わなくても。私が行ってきますから」

そう言って、席を立つ秋子。

「それじゃ、香里ちゃん。留守は頼みましたよ」

「え、ええ……」

水瀬家の主人は、そう言って娘を迎えに行く。後に残ったのは、客人である香里ただ1人。

(……のーむさん……とっても、居心地悪いです……)

だだっ広い他人の家に自分一人。居心地が悪いのは、香里でなくとも当然であろう。

(だいたい……栞が、相沢君と2人だけで一晩を過ごしたいなんて言うから……!)

香里の両親は、香里と入れ替えに、昨日から長期の旅行に出ている。

栞曰く、「うちなら、2人きりになれるんです」と。

当然、そんなことを言われてしまった香里(+美汐)は、美坂家から出て行かざるを得ないわけで。

美汐の家に誘われたが、美汐の目に何かいやな気配を感じたので、 本人だけ家に帰して、自分は、秋子さんの承諾を得て、空いた水瀬家にお邪魔した、というわけである。

(……駅まで往復45分、ってとこかしら……暇ね……)

10分程度ならば、考え事をしながらぼーっとして過ごせばいいが、45分ともなるとそうはいかない。

(ああ……家を出るときに、レポート一式、持ってくれば良かった……って、宿題も終わったんだっけ……)

(あ、そうだ。相沢君の部屋を、ちょっと拝見……男の人の部屋って、見たことないのよね……)

(でも、勝手に人の部屋を見て良いものなのかしら……良いわ、誰に知られるわけでもない)

そう思い立って、香里は祐一の部屋に足を運んだ。

「あら?……思ったより、片づいてるのね……」

祐一の部屋の扉を開けて、香里が一言。

「うーん……そう言えば、漫画なんかだと、こういうところにエッチな本が隠してあったりするのよね……」

といいつつ、香里はベッドの下を覗く。

……しっかり、エロ本がありましたとも。

しかも、Kanonの栞受けレ○同人誌ばかり。

「……相沢君、あなたって……」

と言いつつ、その中の一冊に目を通す。

その本は香里攻め、栞受けの典型的な本だったが、かなり描写がきわどく、思わず赤面してしまうほどだった。

(妄想の世界って……とんでもなく恐ろしいわ……)

恥ずかしさと共に、恐ろしさもこみ上げてくる香里だった。

……祐一の部屋の探索を終了し、名雪の部屋も見る。

が、主人が下宿では、かなり寂れた環境であることに全く間違いはなく、香里も興味を失った。

空き部屋も2~3部屋あり、それらも簡単に見るが、香里の興味はその部屋に向けられることはなかった。

……さらに時間が過ぎる。

水瀬秋子が家を出てから4時間半。もはや時間つぶしも限界を超える。

(遅すぎる……何かあったのかしら……?)

相手が秋子さんとはいえ、ここまで帰りが遅いと当然気になる。

時間が経つにつれ、その疑問は大きくなっていく。

と、そのとき。

トゥルルルルルルルルル……。

電話が鳴る。その電話を思わずとる香里。

「はい、水瀬です」

「祐一?私、名雪!お母さんが……お母さんが……」

「ちょっと名雪!どうしたのよ!」

「え?……誰?」

「私よ、香里!で、のーむさんがどうしたの?」

「香里……?えっとね、お母さんが、交通事故で、私をかばって……」

「で、今いる場所は?」

「えっとね、雪国大学の総合病院。祐一は……?全然連絡が取れないの……」

「相沢君には、こっちから連絡をとっておくわ。名雪はいったん家に戻ってきなさい」

「うん……」

「じゃあ、待ってるから」

そう言って、受話器を置く香里。

間をおかず、もう一度受話器を取って、自宅の電話番号を押す。

トゥルルルルルルルルル……。

「はい~、美坂ですぅ~」

「栞?香里よ、すぐに相沢君を出しなさい!」

「お姉ちゃん……?どうしたの……?」

「後で説明するから、早く相沢君を呼んできて!」

「うん……ちょっと待ってね……」

電話の保留音がなる。その保留音のメロディが、普段よりスローに感じる。

(早くしなさいよ……相沢君!)

「もしもし?お姉ちゃん?」

「栞、どうしたの?」

「祐一さん、全然起きないよ……?」

「何が何でも、すぐにたたき起こしなさい!……それから、起きたらすぐに、水瀬家に戻ってくるように伝えてちょうだい!」

「う、うん……」

香里におびえながら、しかし、眠そうに栞が受話器を置く。

ちょうどそのとき、名雪が家に戻ってきた。

「名雪……お帰りなさい」

心配そうに、名雪を出迎える香里。

「ただいま……香里……」

その心配どおり、目から気力が全くなくなっている名雪。

「名雪、のーむさんに何があったのか、説明してくれる?」

「うん……」

つづく。

あとがき

シリーズ「笑顔と共に」第1回、「身代わり」、いかがだったでしょうか?

えっと……話の前半から中盤にかけての空気が、最後に一気に変わります。

こんなにシリアスな内容を書いたのは、たぶん初めてかな、という気はします。

香里が怖いって……こんな状況、誰だって怖くなると思いますが?

次回は、「星への願い」。

秋子さんは、名雪は、どうなってしまうのか。祐一と栞はいったい何をやっているのか。そして……香里は?

美汐のことは完全に無視して進む、極限の人間ストーリー(?)。

それでは、次回をお楽しみに。