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elder-alliance.org  >  奇跡のかけら  >  KanonTCGSS  >  その15

この話は、Key・VisualArts「Kanon」、Wizards of the Coast社「Magic: the Gathering」、 ブロッコリー「アクエリアンエイジ」およびティーアイ東京「リーフファイトTCG」「KanonTCG」から取材しました。 各TCGに関係する会社名・商品名に限り実在しますが、その他全てフィクションです。 また、「Kanon」のねたばれが一部あります。 以上をふまえた上で、この話をお楽しみ下さい。

第15話~高野僧の法術~

その日の夕方、受験生たる天野美汐が、珍しく2日連続でデュエルスペースに訪れた。

「こんにちは……あれ?川澄さん。今日もバイトですか」

「まこと、珍しいじゃない。どうしたの?」

「いえ、これを処分しに……」

そう言って、美汐は今まで自分が使ってきたカードを含む、M:tGのカード全てを店員の前に放り出した。

「はいはい、じゃあ、コモンはただで引き取らせてもらうからね。アンコモン以上かな、値段が付くのは。しばらくかかるから、その辺で遊んでて」

「……はい、それでは」

そう言うと、美汐はデュエルスペースの一角に陣取って、KanonTCGのルールブックを眺め始めた。

「天野、美汐さんだね」

美汐の前に立ちはだかる少年。名は沢渡真。

「ちょっと……いいですか」

「どうしたんですか……?」

「僕と、勝負してください。このデッキで」

そう言って、真は美汐にデッキをひとつ、渡す。

「M:tGですか……」

「……もうやめたって聞いてるけど、最後に一勝負、お願いします」

「そのデッキで、ですか?」

「ええ。……これは、ミラージュ・テンペスト系のカウンターデッキ。沢渡誠が君に与えたデッキと同じものですよ」

(義兄さんが……?まさか……)

「……わかりました、やりましょう」

「ルールは5th当時のもので。いいですか?」

「ええ、始めましょう……」

……真に渡されたデッキを用いて、美汐はM:tG最後の勝負を始めた。

……30分後。 勝負は、美汐の圧倒的勝利に終わっていた。 使ったデッキは、美汐が青パーミッション、真が赤単色バーン。 ……少年のデッキも、昔、美汐の義兄、沢渡誠とプレイしていたデッキと、全く一緒だった……。

「……満足されましたか?」

「ありがとう。これで爺さんも浮かばれます」

「……爺さん?」

「ああ、あなたが兄と慕っていた男、沢渡誠ですよ」

「誠義兄さん……?」

「……詳しく話しましょう」

そう言って、少年は語り始めた。その話は、かなり非現実的で突拍子もないものだった。

しかし、Kanonをプレイしたばかりで、しかもそれが現実体験として残っている美汐には、十二分に説得力のあるものだった……。

まず、彼らの正体から話さなくてはならない。彼らは、ものみの丘に住む、妖狐の一族である。

彼らは、通常は普通の狐として過ごすが、子を残した後、望むならば自らの命と記憶を捨てて、人間になることができる、らしい。

そして、美汐の義兄の沢渡誠も、相沢祐一が関わったとされる沢渡真琴も、このパターンを踏襲して、人間になった。

彼らは、真の祖父と母らしい。……狐の年齢なら、ちょうど良いかも知れないが……

彼らを含むほとんどの妖狐は、人間になった場合、望むかどうかに関わらず、彼らの記憶は他の妖狐(通常は自分の子どもに1人)に譲り渡される。

そのとき、人間として付けられる名前は、沢渡マコト。マコト、という文字にいろいろな漢字が当てはめられることはあるが、読み方は変わらない。

「沢渡マコト」は、記憶を失ったまま、人間として過ごす。

そして、その目的を達成できたかどうかに関わらず、ある一定期間をおいて、高熱を出して彼らはその命を終える。

……そして、彼、沢渡真は、彼らの記憶を全て引き継ぎ、その記憶の中にあった目的を確認しようと、こうして世の中に現れた。

「……僕が、みんなと違っていることは」

彼は、一言付け足す。

「人間になることを望んでもいないし、記憶も失っていないところです。つまり……僕には、今まで人間になった全ての、妖狐たちの記憶があります」

その言葉に愕然とする美汐。その感情が、一瞬のうちに高まる。

「……義兄さんの記憶を持っている……教えて!義兄さんは……幸せだったの!?」

「……彼は、今、幸せに一生を終えました」

真は言う。

「あなたが強い青使いになったかどうか、それだけが彼の心残りだったのです……」

「まこと~、終わったわよ」

カウンターから、美汐をハンドルで呼ぶ店員の声。

「あ、はい……」

デュエルルームからカウンターへと歩を進める美汐。その、普段では考えられないほど嬉しそうな様子を見て、店員・川澄愛は言う。

「……なんか、楽しそうじゃない。良いことあった?」

「ええ、あの子のおかげでふっきれました」

そう言って、美汐はデュエルスペースで、M:tGのデッキを回している、先程自分が闘った相手を見る。

「なるほどね……よくわからないけど。で、カードの値段だけど……びっくり。状態がいいからね。2万円くらいかな……現金なら」

「現金なら?」

「うん。評価価格はもうちょっと高いよ。カードを買うことを選べば、だいたい3万円くらいかな……」

「それでは、カードを買う方を選びましょう」

「……え?」

「でも……今は決められません。もうちょっと、待ってから……」

「なら、商品券を渡しておくわ。有効期限は半年。絶対に使い忘れないでね!」

「あ、ありがとうございます……」

「当然の権利よ、お客さんなんだから」

頭を下げた美汐を、愛がなだめる。

「それで、まことは何を買うのかな……決められなかったら、私に相談してね」

「はい……とりあえず、おすすめを聞いておきましょう」

「そうね……簡単で厳密なゲームだったら、リーフファイトTCG。 一番流行しているゲームだったら、アクエリアンエイジ。 で……私の一番のお気に入りは、KanonTCG。もうすぐAirも出るからね……」

「そうですね。ちょうど、父からカードをもらったところですし……」

「なら、決まりじゃない。KanonTCG、おすすめよ!」

「ありがとうございました……それでは」

「まことちゃん、まいどあり~」

そうして、美汐はデュエルスペースを後にした。その表情は、3万円程度では絶対に買えないであろう、究極の美しさを持つ微笑みだった。

そして、それを見届ける愛と真の2人も、穏やかな気持ちになっていたに違いない。

つづく。

あとがき

……訳分からない設定を、Kanonに付け足してしまいました。

ちなみに、「妖狐が……」の件は、ほとんど俺の創作部分です。ご了承下さい。

……まだ、AirTCGが出てこないですが、たぶん、このストーリーチェインでは出てこないと思います。

2人のゴール、笑顔と共にあたりで使おうと考えていますが……あまり期待はしないほうが吉かと。

……ちなみに、このチェインが終わってから次のストーリーチェインが始まるまでは、かなり期間が空くと思われますが(バイト、忙しいんです……)、 いつものことと思ってお待ち下さい。

次回は、このストーリーチェイン最後のお話、「銀羽の輝き」。果たして、コストは払えるのか……?お楽しみに。