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elder-alliance.org  >  奇跡のかけら  >  KanonTCGSS  >  その7

この話は、Key・VisualArts「Kanon」及びティーアイ東京「KanonTCG」から取材しました。 KanonおよびKanonTCGに関係する会社名・商品名に限り実在しますが、その他全てフィクションです。 また、「Kanon」および「KanonTCG」のねたばれが一部あります。(特に、今回はKanonのネタばれがひどいです) 以上をふまえた上で、この話をお楽しみ下さい。

第7話~学校の魔物~

キィン……パリン……

タタッ……ドカッ……

真夜中の学校に響き渡る、戦いの音。

「……また、逃げられた……」

そこで戦っているのは、女性。物静かな印象を受ける。

年は……18かそれくらいであろうか。

もう少し年齢が上のような気もするが、まさか学生服を着ている女の子が、二十歳過ぎと言うこともあるまい。

……例外的に、19歳の一年生が、この学校にいることは考えないことにしよう……

「あゆさん、知ってます?」

その例外に、もう1人例外に近い人が話しかける。

「栞ちゃん、どうしたの?」

それは、KanonTCGの大会も終わって数週間経った日のこと。

あゆと栞は、学校の廊下で雑談をしていた。

「今度、倉田先輩が、この学校に来るんですって」

「倉田先輩……?」

「あ、あゆさん、知らないんですね。倉田先輩って言うのは、お姉ちゃんの一つ上の学年の人で、テストの成績が、3年間ずっとトップだったって、有名な人です」

「……?香里さんは?」

「お姉ちゃんは、1回だけ、祐一さんにトップをとられてます」

「祐一君、そんなに出来たんだ……」

「といっても、一回だけですけど」

「それでもすごいよ……」

「で、本題に戻りましょうか……」

その話に、割り込んできた人がいる。

「あははははーっ、佐祐理も混ぜてくれませんかー?」

すらっとした足に、少しおしゃれなスリッパ。

灰色の女性用スーツから、スレンダーな体格が見て取れる。

そして、その長い髪を束ねるようにして、緑のチェック柄のリボンを付けている。

「私、今日から教育実習を受けます、倉田佐祐理といいます。よろしくお願いしますね」

「美坂栞です。よろしくお願いします」

「ボクは月宮あゆ。よろしくお願いします」

「美坂栞さんに、月宮あゆさんですね。よろしくお願いします」

「それで、倉田先輩はどうして、先生になろうって考えたんですか?」

「それはですね……」

そのとき。

「……佐祐理」

黒髪を伸ばし、青いリボンの制服に身を包んだ女性。普通、この色だと2年生だが……?

「あら? 舞、どうしたの?」

「……留年中。2回目」

舞と呼ばれたその少女から、問題発言。

「とすると、ここの3人って、みんな留年組?」

さらに、あゆからも問題発言。

「あゆさんっ!」

さすがに、栞も怒る。

「あははははーっ、楽しそうですね」

が、ひとりストレートの短大2年生は、お気楽そうである。

「私も、留年してみようかな~」

「……やめた方がいい」

2回も留年している舞から、とりあえずつっこみ。が、説得力に欠ける。

「あははははーっ、冗談冗談。舞、かわいい」

「……佐祐理こそ」

2留しているこの女子生徒と、この教育実習生との関係を、いまいちはかりかねているあゆと栞だった。

放課後、浪人中の祐一は、学校で用務員のバイトをしていた。時給は安い、しかし授業は受け放題とのこと。

3年生の授業に紛れ込んで、日があるうちは受験勉強。掃除は学生の仕事なので、用務員室や職員室の雑用が主な仕事だった。

「あれ?教育実習生の方ですか。えっと……倉田さん、でしたっけ」

「あははははーっ、用務員さんも、がんばってくださいね」

「相沢祐一といいます、倉田さんの一つ下の学生でした。今は浪人生で、このバイトをやっています」

「祐一さんですね、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします……それじゃ、俺、仕事の続きがあるんで」

その日の夜。

祐一は、『約束』のメロディを奏でる携帯電話をとる。

相手は、美坂家の自宅の電話。

「もしもし、祐一さんですか?栞です」

「……どうした?」

「祐一さん、あの……学校に、ノートを忘れて来ちゃったんです……」

「……で、取りに行くのにつきあえと?」

「ええ、出来れば……」

「俺が1人でとってくるよ。家で待ってて」

「でも……」

「大丈夫、大丈夫。女の子を、夜中に1人歩きさせるのは危ないから」

「その気持ちはありがたいですけど……」

「心配ないから、任せておけって」

「……そこまで言うんでしたら」

「じゃ、また後で」

祐一は、制服を着直して、コートを羽織って学校に向かって歩き出した。

名雪のノートの時は、そんなことしなかったくせに……。

学校。

「……用務員の俺が言うのも何だが、この学校のセキュリティ、甘すぎないか……?」

そう、学校の門には、鍵がかかっていなかったのである。 しかも、職員通用口の鍵も開きっぱなし。 これでは、『いわゆるひとつのメイクミラクル』のおじさんが『セ●ムしてますか?』とギャグをかます暇もなく、泥棒に入られてしまうに違いない。

そんな校舎に、祐一は足を踏み入れた。

カキィン……。

金属音が響き渡る。

ダダッ……。

リノリウムの床を蹴る、足音も聞こえる。

カキィン……ダダッ……

一瞬のうちに、金属音と、足音が辺り一面を埋め尽くす。

……。

そしてまた消える。

「……何が起きてるんだ……?」

祐一は、辺りを見回した。しかし、何も変わったものは見えない。

「……とりあえず、栞のノートでも回収しますか……」

と意気込んで、祐一が教室に足を踏み入れたそのとき。

どかっ!

祐一の背中に、衝撃が走った。

吹き飛ばされ、教室の中に転がり込む祐一。

後ろを振り向くと、そこには何もなかった。……が、何か嫌な気配がする。

「……何なんだよ……うぐっ!」

今度は、はっきりと。何もない空間から、腹に一撃。

「ぐぁ……ごほっ、ごほっ!」

ダメージから回復しきっていない祐一に、さらに何もない空間から一撃。

……はなかった。

「ぐっ……え?」

そこには、西洋の剣を構えた、物静かそうな女性が立っていた。

刃先をこちらに向けて。

「……あと1体」

その女性は、そうつぶやくと、その剣を腰につってあるさやに収める。そして、踵を返す。

「……ちょっと待て!」

それを止めたのは、祐一。

「……何が、どうなってるんだよ……説明しろよ!」

「……魔物」

ぶっきらぼうな祐一の言葉に、あくまでも物静かに答を返すその女性。

「魔物?」

「……見えない魔物。今、1体倒した」

「言っている意味が分からない」

「……見えない人は、放っておいて」

そのまま、その女性はその場を去った。

「……今のは、いったい……?」

あとには、呆然とした祐一だけが取り残されていた。

翌日の昼休み。

「ちょっと話がある」

バイト料(授業を好きに聞く権利)をよこしまな使い方で利用して、その女性の居場所を突き止めた祐一は、 昼休みになって、廊下で1人になったその女性に話しかける。

「……何」

「昨日の夜のことだ」

そうやって切り出そうとした祐一に、後ろから女性がふたり、やってきた。

「あははははーっ、舞、お友達ですかーっ?」

「祐一さん、私を差し置いて、何ナンパなんてしてるんですか?」

そう、教育実習生・倉田佐祐理と、2年生・美坂栞である。

「祐一さん……」

「栞、おまえの気持ちも分かるけど、ちょっと重要な話が……」

「あら?祐一さんだったんですか。舞と一緒にお弁当を食べようと思ったのですが、祐一さんも一緒にどうですか?」

「はぁ……栞も一緒ですよね?では、ご一緒させていただきます」

こうして、この4人は、昼食を共にすることになった。

「佐祐理先生もKanonTCG、やるんですか……」

そう言うのは、最年少の栞。

「ええ、短大で、友達と一緒にやってるんですよ」

佐祐理が、それに答える。

昼食は、佐祐理が学生時代によく来ていたという、階段の最上階にある、屋上の扉の前。

普通、こういうところは埃がかぶっているものだが、なぜかこの学校はそんなことがない。

「で、倉田さんは、どんなデッキを使うんですか?」

「祐一さん、佐祐理でいいです。あと、デッキじゃなくて、奇跡、ですよ」

「失礼しました。で、佐祐理さん?」

「奇跡ですよね。私は……舞の、バトル奇跡ばかり使ってます」

そんな感じで盛り上がるのは、浪人生・祐一、留年生・栞、教育実習生・佐祐理の3人。

残り1人は……

「もぐもぐ」

一心に、弁当をつついていた。

「そう言えば、エキスパンションで、剣スート、強くなりましたよね……」

「ええ。『ちょっぷ』、『猛特訓』には、本当に助かっているんですよ」

「そう言えば、『ちょっぷ』で思い出しましたけど、佐祐理先生が苦手な、『味噌汁風呂』『学校の魔物』あたりも、ちょっぷで1発ですよね」

「……魔物」

何気ない栞の一言に、1人飯を食っていたもう1人の少女が、わずかに反応する。

それを見て、祐一は自分の用事を思いだした。

「そうだ。えっと……」

「この子は、川澄舞、です。舞、って呼んであげてください」

「佐祐理さん、すみません。で、舞」

「……自己紹介」

「おっと、そうだった。俺は、相沢祐一。この学校のOB1年」

「美坂栞です。現役の2年生です」

「あははははーっ、佐祐理は、倉田佐祐理。雪国短期大学2年にして、教育実習生です」

「……川澄舞」

と、一通り自己紹介が終わったところで、本題。

「で、昨日の夜……何やってたんだ?」

「……魔物」

「魔物?」

「……戦ってた」

「そいつは見えるのか?」

「……私以外には見えない」

とりあえず、佐祐理と栞は、さっきから仲間に入れて欲しそうに、祐一と舞の会話を見ていた。……が、祐一の方は真剣である。

「で、俺に攻撃したのは?」

「……たぶん、魔物」

そこで、佐祐理が口を挟む。

「ほぇ~、学校に魔物って、本当にいるんですね~」

「だったら、『ちょっぷ』で一発ですよ、きっと」

KanonTCGじゃないんだってば……

そう言いたかったが、栞に嫌われるのもいやだったので、その言葉を飲み込む祐一だった。

その日の夜。

今までと同様に、1人で校舎に立つ舞。

……しかし、手には何も持っていない。

ふっ……。

空気が変わる。いつものとおり、とぎすまされた、冷たい空気。

「……来た」

見えない魔物に向かって、手刀を振るう。

ぺちっ!

何とも情けない音を立てて、舞の手が、空中に止まる。

「魔物……『ちょっぷ』で一発……」

舞がそうつぶやいた瞬間、魔物の気配が、今までの冷たい空気から一転、暖かいものに変わる。

(まい……KanonTCG、やってるの?)

舞の心の中に、何かが問いかけてくる。

「……分からない」

(まい……まいは、女の子なんだよ。弱くても、いいんだよ)

「……何を言っている」

(まい……KanonTCG、やってないんだったら、はじめた方がいいよ)

「……?」

(きっと、すてきなともだちにであえる)

「……」

(きっと、すてきなひとにであえる)

「……」

(今までみたいに、ひとりはいやでしょ?)

「……佐祐理がいた」

(その佐祐理さんも、KanonTCG、やってるんでしょ)

「……ああ」

(ねっ、だから、まいもKanonTCGはじめようよ)

「……魔物がいる」

(……まい、魔物って、なんだか分かる?)

「……敵」

(ちがうよ。魔物は、私。そして、あなた。あなたのさみしいきもちが、わたしたちをうんだの)

「……何が言いたい」

(だから、まいがさみしくなければ、わたしはあなたにかえれる。ひとつになれる)

(ね、さみしいのはいやでしょ?ひとりでつよいふりしてるのも、いやでしょ)

(だから……KanonTCG、はじめようよ)

「……わかった」

(……ありがとう……)

その瞬間、舞の手の先から、淡い光がたちのぼる。

その光は、舞の全身を包み込み、すぐに消えた。

あとには、魔物の気配など全くない、暖かい闇を持つ、神秘的な廊下だけが残されていた。

「……魔物……本当に、ちょっぷで一発だった……」

そして、もうひとりの自分を取り戻した彼女は、何が起きたのかが分からず、ただそこに立ちつくしていた。

次の日の昼時。昨日と同じ場所で。

「今日は、4人分も作ってきたんですよ!」

佐祐理さん特製の、4段重箱弁当が、祐一・舞・栞の目の前にあった。

「わぁ……先生、すごい」

「佐祐理さん、よくこんなに作ってきましたねぇ……」

「これで、引き分けになっても勝利間違いなしです」

「くすっ……先生、自分で言っちゃ駄目ですよ」

周囲が、笑いで朗らかな雰囲気に包まれる。

「……そうだ、佐祐理」

「舞、どうしたの?」

「……私も、KanonTCGやるから、教えて欲しい」

「へぇ……舞も、始めるんだ」

こくり。舞が首を縦に振る。

「……楽しそうだから」

「うん!……舞、大好き!本当に、嬉しいよ!」

佐祐理が、舞に抱きつく。

「……佐祐理、恥ずかしい」

舞が、ほんのり赤くなった表情を佐祐理に向ける。

こうして、KanonTCGプレイヤーがまたひとり、誕生した。

おしまい。

おまけ

「なあ、栞」

祐一が、栞に話しかける。

「祐一さん、どうしたんです?」

「何か、俺たちって、今回、脇役だよな……」

「まあ、仕方がないですよ。だって……あのふたりの間に、入れると思います?」

そう言って、栞は、まだ抱きついている、成人式を目前に控えた2人組を見る。

「……無理」

「そう言うわけで、あきらめてください」

「……そんなこと言う人、嫌いです……」

「ひどい!私の台詞、とらないでください!」

おまけ2

「舞、放課後、うちに来てよ」

佐祐理が、こっそり舞に耳打ちする。

「……分かった」

そして放課後、佐祐理の自室。

「チャームフィールドって、知ってる?」

「……知らない」

「日本語に直すと、『魅了する空間』。相手のキャラを、自分のものにしてしまうカード」

そう言うと、佐祐理は舞に、不意打ちのようにキスをする。

「……びっくり」

「舞は、こういう女の子、嫌い?」

「……嫌いじゃない」

……………………。

…………。

……。

こうして、佐祐理が使った、現実世界でのチャームフィールドは、あたかも増強した「戦士舞」「セーラー服舞」に使うかのように、 舞に対して絶大な効果を発揮するのでありました。

……っていうか、あんたら、このSSは18禁じゃないんだから、自重しなさいよ……

おまけ3

(まい……新しい一歩だね)

(あなたが、わたしを受け入れてくれた)

(あなたが、私と違う道を歩んでくれた)

(孤独とさみしさを、ずっと感じていた昨日)

(愛情とよろこびを、ずっと感じている明日)

(まい……あなたの人生は、今日から始まるの)

(私とあなたの……ふたりでひとりの人生が)

こんどこそおしまい。

あとがき

久しぶりの、KanonTCGのSSです。

今回は、Kanonで有名なレ●カップル(本編・舞シナリオの祐一内部でのみ)、舞&佐祐理に登場してもらいました。 とりあえず、カードでのバトルはでてきません。

で、新キャラ。

倉田佐祐理(20歳) 雪国短期大学教育学部2年生。教員の資格はとりあえず取っておく。 舞の奇跡だけしか使わない(逆に言えば、舞の奇跡なら何でも使う)。プレイングスタイルは守備的。

川澄舞(19歳) 私立Kanon学園3年生(!)。留年2回目。 今回の話に触発されて、KanonTCGを始める。

かわすみまい(設定年齢7歳、実年齢12歳) 舞をKanonTCGに引きずり込んだ張本人。 具体的なことは……Kanonで、舞のシナリオをクリアしてください。

で、今回は、舞のシナリオをクリアしていないと、ちんぷんかんぷんだったに違いありません(クリアしていてもちんぷんかんぷん……?そうかもしれません)。

4・5・6話で、一人称の表現はたくさん使ったので(そのときは、香里・栞+αの視点で書いていたつもりです)、 とりあえず、自分では、完全に三人称の立場で書こうと決めていましたが(おまけ2を除く)、どうしても誰かの視点が入ってしまう。

どれか1キャラの視点が入ってしまうことは、小説としては仕方のないことなんでしょうか?

そんなことはないと信じたいのですが……やっぱり、文章力の不足でしょうか。

ちなみに、()でくくられた台詞は、かわすみまい(川澄舞、ではなく)の台詞です。おわかりいただけたでしょうか?

なお、このSSは、

ともあれ、ちょっぷ。ちょっぷ一撃で[コスプレ会場]や[ファミリーレストラン]……あ、[学校の魔物]もやっつけられる(笑)。 (葩稍あづさ「KanonTCG・このカードってどーなの?Vol.76」より)

の一文を、そのままSSになおしただけ、という説がちまたで非常に有力です。

……ていうか、そのままですね。失礼いたしました。