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この話は、ティーアイ東京「KanonTCG」及び2000年8/11~13の「コミックマーケット58」から取材しました。 会社名・商品名に限り実在しますが、その他全てフィクションです。 また、「Kanon」および「KanonTCG」のねたばれが一部あります。 以上をふまえた上で、この話をお楽しみ下さい。

第3話~おやゆび姫~

「はい、ティーアイ東京のブースはこちらになります!」

「最後尾はあちらです!」

「列を確定します、1、2、……」

列のあちらこちらから、威勢のいい声が聞こえてくる。

その列の中に、一人の少女がいた。

「うぐぅ……さっきから、5時間も並んでるよぉ……」

少女の名前は月宮あゆ。

KanonTCGサークル・ミラクルメーカー構成員の友人である。

少女は、少年に言いつけられている。

「Kanonのエキスパンション先行パック、買えるだけ買ってこいよ」

「うん、分かったよ。その代わり、あのサークルの新刊、買ってきてね」

「いいぞ」

「うんっ、約束だよっ」

少女はその約束を守るため、炎天下に連なるティーアイ東京の列に並んだ。が、列は全く進まない。

1時間が経ち、2時間が経つ。少しずつは動いているが、列の終わりは、まだ見えない。

(うぐぅ……熱いよ……)

(日焼けしちゃうよ……肌が痛いよ……)

(のどが渇いた……飲み物が欲しい……)

(お腹空いたよぉ……たい焼き、食べたいな……)

そんなことを思っているあゆだが、そんな奇跡をかなえてくれそうな人は、どこにも見あたらない。

が、周りの人たちは違っていた。仲間と思われる人たちと、小型トランシーバーのようなもので連絡を取り合い、彼らに飲み物を持ってきてもらっていたのだ。

彼女は、その「ケータイ」と言われるものを持っていない。それどころか、それがなんなのかさえ分かっていないのだ。

(4つ目の奇跡……起きるかな……)

(周りの人たち、うらやましい……)

そんなことを、とりとめもなく考えているうちに、5時間も過ぎてしまい、冒頭部分に戻る。

時間は午後4時。一般サークルは終了した時間なのに、あゆはまだ並んでいる。

(祐一君、今頃なにしてるのかなぁ……)

(名雪さんと、香里さんも来るって言ってたよね……)

(あ、よく考えてみたら、ここってお台場の海なんだ……)

ここまで思考が飛躍すると、常識では手がつけられない。それだけ、思考能力が麻痺している証拠なのだ。

しかし、どんなつらいことにも終わりは来る。やまない雨が決してないように。

そう、列に終わりが見えてきたのだ。

時刻は午後4時30分。あゆが並びはじめてから、実に5時間半近くにもなる。

「はい、皆さん、きちんと4列になって下さい!」

「列の整理にご協力お願いします!」

周りが静かになっていく中、ここだけが、やたらに騒がしくなってくる。

ティーアイ東京のスタッフの指示を聞きつつ、あゆは待った。

そして、そのときはやってきた。

「はい、こちらの12名様、2列になって進んでください!」

あゆはその指示に従い、会場の中に入っていく。

そうして、目の前のエキスパンション先行パックに飛びつく。

「お嬢ちゃん、先行パックは4つまでだよ」

「うぐぅ、分かりました……」

そうして、あゆはパックを4つ注文する。

「お会計は2000円ね」

(うぐぅ、お金持ってきてないよ……あ、そうだ!)

「はい、5000円でいいですか?」

「うん、3000円のお返しだよ」

「うぐぅ、ありがとうございます」

そう、あゆは祐一に、列に並ぶ直前にお金を渡されていたのだ。列に並んでいたから、お金を使うことも出来ず、無事に会計を済ませられたのである。

こうして、無事にお使いを終えたあゆの目の前に、祐一と名雪と香里が現れた。

「あゆ、お疲れさま」

「あゆちゃん、よく頑張ったね」

「えらいえらい」

ミラクルメーカー構成員たちからねぎらいの言葉をかけてもらうあゆ。

「うぐぅ、これでいいんだよね。」

「ああ、よくやったな」

「うぐぅ」

あゆは、うれしさのあまり泣き出しそうになっている。

そんなあゆを後目に、祐一は名雪と香里に話しかける。

「で、あゆが買ってきたパックは、とりあえず全員に1パックずつ行き渡るとして、問題は最後の1パックだよな……」

「そうね。KanonTCGのリーグ戦でもやって、勝率の一番いい人って言うのは?」

「あ、それいいかも」

「うぐぅ、だめだよっ!」

祐一・名雪・香里の会話に、あゆが割り込む。

「ボクが買ってきたんだから、一個はボクの!」

その目は真剣である。祐一が聞く。

「あゆ、おまえ、KanonTCG、出来るの?」

「できないよっ!」あゆは言い切る。「でも、これから覚えればいいんだから!」

(また、このパターン……)

祐一は、肩をすくめる。

(まあいいか、プレイヤーも増えることだし。でも、あゆが本当に理解できるのか……?)

おしまい。

おまけ

「そうだ、あゆ、そこでたい焼き売ってたから、少し買ってきたぞ」

そう言うと、祐一はたい焼きを一袋あゆに渡した。

「うぐぅ、ありがと。お腹空いてたんだ」

そう言って、たい焼きをほおばる。

「もごもご」

「口をからにしてからしゃべれ。」

「……ん、他の人たちみたいに、たい焼きとか、列の途中で差し入れしてくれるとよかったのに……」

「だったら、ケータイにかけろよ……」

「ケータイって、何?」

「……」

(そう言えば、あゆって携帯電話、知らないんだ……)

携帯電話について、少し講釈をたれたあと、祐一は付け足す。

「そうそう、ちなみに、そのたい焼きは食い逃げじゃないからな」

「うぐぅ、祐一君のいじわる……」

おまけ2

「で、明日は誰が並ぶ?プレイヤー増えちゃったから、明日は2人じゃないと……」

4人は、帰り道、TWRに乗りながら作戦を練っていた。

「ボクは、もうやらないからね!」

「大丈夫よ、あゆちゃん。祐一は決定で、あとはわたしか香里だから」

「……KanonTCGで勝負よ、名雪。負けた方が明日並ぶ方ね。」

こうして、KanonTCGの夜は更けぬ。

おまけ3

「うぐぅ、これがボク?……かわいい」

あゆは、宿に戻って早速パックを開けた(もちろん、祐一の指示でスリーブに入れてある)。そこで、「おやゆび姫あゆ」のカードを見て漏らした台詞である。

「こんな格好、してみたいな……」

こうやって、コスプレイヤーは増えていく……。

こんどこそおしまい。