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elder-alliance.org  >  奇跡のかけら  >  降りかかる災い  >  倉田佐祐理編 その2

この話は、Key/VisualArts「Kanon」から取材しました。 「Kanon」のねたばれが一部あります。 また、一部の商品名は実在するものから取材しました。 以上をふまえた上で、この話をお楽しみ下さい。

第2話~計画~

わたしは、お父様に言われ続けている。

「威厳をもて、甘やかすな」と。

わたしは、お父様とお母様のおかげで、正しい子に育つことができた。

だから、今度は……お父様とお母様の代わりに、一弥を、正しい子に育てなければならない。

そう、わたしは、立派にお姉さんをつとめて、弟と一緒に、正しい子になるのだ。

一弥を育てる。

お父様のように、立派な人に育てる。

そのためには、甘やかさずに育てることが必要。

つまり、厳しいこと。一弥にとって、苦しいこと。

一弥にとって苦しいこと、当然、わたしにとっても苦しいこと。

「一弥、めっ」

「ダメだよ、一弥」

せっかくの、一弥と2人だけの時間も、そんな、ネガティブな言葉しかでてこない。

一弥を、ほめてあげられれば。

一弥と、笑ってあげられれば。

一弥と、遊んであげられれば。

一弥と、楽しむことができれば。

そんな後悔が、一弥の泣き顔を見るたびに、一弥と別れるたびに、わたしの胸に突き刺さる。

それでも、わたしはずっと、一弥に厳しくあたった。

一弥が、それで正しい子になれると、信じて。

こうして、一年、二年と過ぎる。

わたしが小学4年生になった頃、一弥は幼稚園に上がる。

そのころから、一弥は、だんだんと体調が悪くなっていった。

元々体は強いほうではなかったが、それに追い打ちをかけるかのように、見るのもためらわれるほど、一弥は、日ごとに弱々しくなっていった。

そして、一弥は……病院での生活を、余儀なくされるようになった。

病院の生活が長くなり、一弥はそれでも衰弱していく。

わたしはお父様に尋ねる。

「お父様、ひとつだけお願いがあります」

「何だい、佐祐理」

「一弥の今の病気が治ったら、頭をなでてあげていいですか。よく頑張った、って

そして、たくさんの駄菓子を買ってあげていいですか。

ふたりで食べてもいいですか」

「ああ、そうだな……。

そうしてあげてくれ。きっと一弥も喜ぶ」

お父様から、許しがもらえた。

でも、そう言ったお父様は……すごく、複雑な表情をしていた。

微笑むその表情の、目に宿るのは……怒り、そして悲しみ。

そんな表情を見るのは、初めてだった。

わたしの胸の中に、言いようのない不安がこみ上げる。

後から考えると……そのときのわたしは、きっと、こう言いたかったに違いない。

『お父様、なんでそんな表情をするのですか?

佐祐理がこれからするのは、それほど悪いことですか?』

それから、しばらくの時が流れた。

だけど、一弥の病気は一向によくならず、ただ、悪化する一方だった。

それは、佐祐理というこの姉から逃げるように。

倉田というこの家から逃げるように。

自分が生きている、この世界から逃げるように。

ただ、静かに、その病気を悪化させていった。

わたしは、決意した。

一弥に楽しいことを教えたいから。

一弥と、普通の遊びをしたいから。

一弥に、元気になって欲しいから。

……一弥の喜ぶ顔を、見たいから。

そのために、一度だけ、悪い子になる。

一弥と一緒に、いっぱいの駄菓子を食べる。

一弥と一緒に、空っぽの水鉄砲を撃ち合う。

一弥と一緒に、一弥のベッドで、ふたりで遊ぶ。

お父様に絶望されてもいい。

お母様に見放されてもいい。

お医者様に殴られてもいい。

このまま何もしなければ、一弥は絶対に戻ってこない。

わたしは、それを直感していた。

最後の、一弥を救うチャンス。

そのための、病院侵入大作戦を、明日始める。

学校の授業中、わたしは珍しく、先生に怒られた。

授業中、居眠りをしたのだ。

でも、それは覚悟の上……いや、計算の上だった。

今日の授業のノートは、全部友達に頼んである。

今夜、病院に忍び込むためには、今眠っておかないと体力が持たない。

そう考えた上での、計算された居眠りだった。

放課後。

わたしの財布には、夏目漱石が一人、眠っている。

いつもより、二桁多い金額。

そして、いつもは通り過ぎていた、駄菓子屋に足を踏み入れる。

「あら、お嬢ちゃん、見ない顔だね~」

駄菓子屋のおばさんが、わたしに声をかける。

「おばさん、質問していいですか?」

「あらあら、礼儀正しいお嬢ちゃんね。なにかな?」

「みんながよく買う駄菓子って、どれですか? あと、水鉄砲が欲しいのですが」

「駄菓子と水鉄砲、そおねぇ……水鉄砲だったら、この辺かな」

そう言って、駄菓子屋のおばさんはそこにある水鉄砲を指さす。

「ちょっと高いよ、一個150円もするからね」

「大丈夫です、これをふたつと……あと、駄菓子をいっぱい下さい」

「いっぱい、ねぇ……お嬢ちゃん、今日はどれくらい使えるの?」

「1000円くらいです」

「で、その中で、どれくらい駄菓子につぎ込むつもりなの?」

「1000円くらいです」

「まさか……有り金全部駄菓子につぎ込もうって言うんじゃ……」

「そうですよ」

「お嬢ちゃん……冗談はお止しよ」

駄菓子屋のおばさんの表情が、一転して険しいものになる。

「わたしはまじめです」

「……そのお金をどこから手に入れて、何のために駄菓子を買うのか。

説明されないと、お嬢ちゃんに売ることはできないよ」

なんだ、このおばさんは犯罪か何かだと思ってるんだ。

だから、こんなに険しい表情をしている。

だったら、こっちが怖がる理由は全くない。

わたしが怖いのは、お父様とお母様とお医者様だけだから。

ならば、堂々と説明するだけ。手段と、目的を。

「このお金は、お小遣いが3ヶ月分くらいです。

使う用事がありませんから、これくらいなら簡単に溜まります」

「そうね、お嬢ちゃん、うちの店は初めてでしょう」

「1回だけ、5年くらい前に使ってます」

「世間では、それを初めてって言うのよ。で、なんでそんなに駄菓子を買うの」

それでも、おばさんの警戒は解けない。

「病院に、弟がいるんです。そのお見舞いに、駄菓子と水鉄砲を持っていこうと思って」

「だとしても、やりすぎだよ、お嬢ちゃん」

「わたしは頭が悪いですから、どれぐらいがちょうどいいか、分かりません」

「頭が悪い、じゃなくて、慣れてない、でしょう」

その一言で、おばさんの警戒が解けた。

「……で、弟さんはどんな駄菓子が好みなんだい?

お嬢ちゃんは初めてでも、弟さんは常連なんでしょ?」

「……弟は、本当に初めてです」

「あれま。それじゃあ、美味しいのを準備しないとね」

そう言って、おばさんは駄菓子を取っていく。

うまい棒、チロルチョコ、ミニコーラ、ムギチョコ、えびせん、人参(にんじん)。

それを持ってきて、袋に詰める。

「これだけあっても150円。で、お嬢ちゃんも一緒に食べるんだよね?

2人分揃えて、300円。鉄砲も合わせて600円。

なんだい、1000円もいらなかったじゃない」

「ありがとうございます」

そう言って、財布に入れた1000円札を、渡す。

「ありがとうね。お返しが400円。なくすんじゃないよ」

「はい」

わたしは、受け取った硬貨を財布に戻す。

「うん、それでよし。気を付けてお行き」

そう言って、おばさんから紙袋を受け取る。

紙袋は、駄菓子と水鉄砲でぱんぱんになっていた。

「ありがとうございました」

「それはこっちの台詞だよ。今度は、弟さんも一緒に連れておいで」

その一言を受け取ると、わたしは嬉しくなって、家に向かってかけだした。

久しぶりに高鳴る、この気持ち。

あとは……いかに家を抜け出して、病院に忍び込むか。

その、単純にして難解なパズルを、夜までに解けばいいのだ。

つづく。

あとがき

降りかかる災い、倉田佐祐理編第2話、お待たせいたしました。

で……この話を書くにあたって、 (佐祐理シナリオ何度もリプレイは当たり前として)佐祐理にいくらお金を持たせるかを判断するために(1000円?2000円?)、 Web検索をかけました(Gooで、「駄菓子」「水鉄砲」で検索をかけたのです)。

すると、駄菓子屋さんのHPや佐祐理SSのHPに混じって、こんなHPが。

DustofHuman!!~おろしたてのホームページ~内、まにあっくにあいたくて……

「あいたくて……~your smiles in my heart~」ねぇ……(汗

コナミは、と○メモシリーズだけでは飽き足らなかったらしい。

……なんてものを検索したんだ、俺(爆)。

参照サイト