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elder-alliance.org  >  奇跡のかけら  >  降りかかる災い  >  倉田佐祐理編 if... その5

この話は、Key/VisualArts「Kanon」から取材しました。 「Kanon」のねたばれが一部あります。 以上をふまえた上で、この話をお楽しみ下さい。

第5話~化学的な解答~

放課後。

わたしは、情報分析を始めた。

原因は、水瀬秋子さんのジャムを使ったベアノティーに違いない。

そう考えて、記憶をたどりながら簡単な表を作る。

できあがった表は、ジャムだけが原因ではない、ふたつの事実を指し示していた。

ベアノジャム重曹変化
祐一さん
××
美坂さん××
水瀬さん××
??さん××
佐祐理

ひとつの事実は、ジャム以外に重曹が必要なこと。

もうひとつの事実は、冷たいダージリンではダメで、暖かいベアノティーが必要なこと。

「もうひとつ化学反応があれば、ジャムでいけるんだけど……」

このふたつの条件は、お母様のおっしゃる『もうひとつの化学反応』を引き起こすことができるのではないか。

それを確認しようと、舞に声をかけ、祐一さんと水瀬さんのいるクラスへと向かう。

祐一さんの教室では、祐一さんの席の周りに人だかりができていた。 わたしが人だかりを確認した直後、舞がその群衆に突入――否、上を飛び越えて中心へと吸い込まれる。

果たして数秒後、モーセのごとく人の海を割り、舞が祐一さんを抱きかかえて戻ってきた。

そのときの舞の表情は、犬やウサギをかわいがっているときのような、幸せそうな表情で。

となりにいた水瀬さんの表情は、大切な人形をとられたときのような、悔しそうな表情で。

舞の両手の中にいた祐一さんの表情は、歌曲ドナドナの子牛のような、悲しそうな表情だった。

「そんなことより聞いてください祐一さん」

祐一さんの表情を無視して、私は祐一さんと舞、それに水瀬さんに仮説を説明した。

「舞と北川がポイントですね、舞は重曹を使ってない、北川は紅茶が違う」

「でも、紅茶って種類でそんなに成分違うものなの?」

「……たぶん、温度調節がポイント」

この3人は、私の仮説を完全に理解した。祐一さんの指摘が完璧だったことが、舞と水瀬さんの理解を早めたに違いない。

「あとは、秋子さんに検証してもらうだけですね。真美さんに手伝ってもらうと早そうです」

祐一さんの言葉に、一同はうなずく。もとより、そのつもりでこちらの教室へと向かってきたのだ。

美坂さんを加えた5人で水瀬家に向かうと、水瀬家のリビングには、普段は礼儀正しく貞淑な女性が、 来客用のソファを使い切って、だらしなく眠っていた。

「ごめんなさいね、今起こすわ」

家の主は言葉通り、従兄であるわたしの母を、文字通りたたき起こした。

「……うにゃ……佐祐理?」

その言葉に、わたしは黙ってうなずく。

「おかえりぃ……」

「お母様、お休みでしたところ申し訳ございませんが……」

そう言って、わたしはお母様に仮説を伝える。

説明が終わると、お母様はわたしにありがとう、と一言残し、お父様へと電話をする。

電話がすむと、お母様は秋子さんを呼び出し、ジャムの残量を確認する。

その目は、自信と確信をもっともよく表していた。

お父様が淹れた、ちょっとぬるめのベアノティーに、お母様がジャムを混ぜる。

少し経って色が抜けてきた頃に、重曹をまぶす。

軽く混ぜた後、お母様がその紅茶を魔法で解析する。

「うん、完璧」

お母様が、わたしにその紅茶を差し出す。

わたしは、黙ってそれを飲み干す。

お父様の紅茶は、いつ飲んでも絶品である。

そして、身体には、特に異状はない。

「明日になってみないとわからないかしら」

お母様は、その言葉を発するときも、自信を崩すことはなかった。

「次は俺ですね」

祐一さんが、名乗り出る。

お母様と秋子さんは、うなずく。

しかし。

「重曹はどうされました?」

美坂さんの指摘に気がついて、一同が周りを見渡すと。

「……カルメ焼き」

舞が、重曹を使い切っていた。

つづく。

あとがき

番外編・第5話です。

いいところで止めてみました。

Kanonのテンプレ、かなり外してるなと思いつつ。

鍵作品に戻ることがあれば、また書き直しましょうか、PDFで(笑)。

追記(3/8,2004):誤植を訂正いたしました、お詫びいたします。